「医療費で国は潰れない」 おすすめ度:
投稿日:2006-11-12
高齢者医療・介護・福祉の歴史と、それらの少し前の現状がわかる。
少し前の現状、と書いたのは、
この本が介護保険が出来る前に書かれているせいだが、
介護保険が出来た後も、高齢者医療・介護・福祉の現状はそれほど変わっていないと思う。
要するに、介護は現在でも非常にしんどい。
保険でまかなわれる介護サービスが増えても、
介護が家族(特に女性)に押し付けられたままであるという状態はあまり変わっていない。
少し良くなった面もあるだろうが、まだまだ全然たりない。
ほんとにそう思う。
家族による介護は日本における家庭の美風だった、
と言うようなことを言う人もいるが、
それがどのくらいウソであるかは、この本にも書かれている。
日本がまだ貧しいころのお年よりは、介護される立場になると短期間のうちに亡くなってしまっていたので、介護に割かれる労働力はそれほど多くなかったのだ。
家族介護が日本の美風である、
というようなことは、高齢者医療や介護にお金をかけたくない政治家の考え出したフィクションなのである。
さらに、
医療や介護にお金がかかるから、日本の財政がやばい、
と言うような話もウソである。
財政がやばいのは、無駄な公共事業のせいである。
そして、
景気が悪いのは、医療や福祉をないがしろにしたことで発生した社会不安のせい。
なのだ。
公共事業による経済のテコ入れ、
みたいなことは実はほとんど効果が無い、と、徐々に示されつつあるようだが、
公共事業で、使わない建物をたてたり道路作ったりすることにお金をつぎ込むよりも、
医療や福祉にお金をかけたほうがよっぽど建設的だろうと思う。
医療や福祉にもっとお金をかければ、そこで新たな雇用だって生まれるし、
介護労働から多くの女性が解放されれば、少子化で減少する労働力の問題をカバー出来る。
この本に書かれているような、
医療や介護にしっかりお金をかければ、国の全体の力も向上するという理屈を、
メディアなどももっと取り上げるべきだと思う。
「高齢者医療と福祉のレビュー」 おすすめ度:
投稿日:2001-09-16
高齢化社会における家族とは,外部サービスの援助なしには成り立たない,今までに存在しなかった新たな人間関係なのだという,衝撃的なメッセージを発している.92年の厚生省の調査は「寝たきり期間」が約半数で3年以上に及び,1年以上は8割弱に及ぶこと,また介護者の約半数が60歳以上であることを示している.働き盛りの人たちに対する介護の影響も大きく,大企業の管理職を対象に行われた調査(1993)によると回答者の大半が,自分や妻の親などに介護が必要な人がおり,その6割が仕事になんらかの悪影響を被っている.重い高齢障害者の介護の場合,介護している家族は24時間拘束される精神的重圧の上,夜昼とない介護仕事の重荷を背負わされる.それはまさに拷問のような辛苦だそうだ.家族内でこれに対処しようとすることには限界がある.そして,これを社会的に受け止めることが可能であることを北欧諸国は示した.
老人介護問題が生じた社会的経緯,日本の老人福祉の歩み,介護の家族神話が幻想であること,このまま老人問題を医療まかせにすると病院がその機能を失いかねないこと,福祉亡国論に根拠がないこと,福祉が経済を成長させることなどについて実例やグラフ/表を多用して分かりやすく示している.
現代では8割の人が65歳まで生きる(2010年には9割).皆がいずれ高齢者になるのだという自覚を持つ必要がある.高齢者福祉の問題は私たちみんなの問題なのだと訴えている.
高齢者福祉の政治的な動きが活発だった1996年に出版された本である.