「漠然とした死ではなく」 おすすめ度:
投稿日:2005-10-02
著者のあちこちの雑誌に掲載されたエッセイをまとめたものです。そのための重複があり、全体にスローな印象がありました。読んでいるときにはこれが少し気になってしまいました。でも、偉大な著者なのでその主張は決して少なくなく、全体を通して神経心理学が何を意図した学問なのかがおぼろげながら見えてくる仕組みになっています。
時間の経過とともに、今は気持ちよい読後感だけが残っています。他の方が書かれていますが「自己の死」というものを実に見事に説明してあるからです。漠然とした死は忌み嫌われます。近しい人の死は悲しみの対象です。でも、自己の死というのは思ったよりずっとなんでもないことなのだということが、著者の長年の神経心理学的な観察をベースに、納得のいく書き方で提示されています。神経心理学自身に興味がない人でもこの章は読むに値すると思います。
「心とはどのようなものか」 おすすめ度:
投稿日:2003-04-09
本書は神経心理学の要点をわかり易く書いていて恰好の入門書ともいえますが、むしろ著者の臨床経験の総まとめといえる豊かなエッセンスが述べられていると思います。
眼前の物を模写させても右半分しか描けない人(左半側空間無視)に、なじみの風景のことを話してもらったところ、その風景の左側が欠けていた! という。「見るとは心理現象なのである」と書かれている。
また、人は自己の死を体験することはないということです。死に際して脳自体が変容していき、人は正常な感覚で自己の死を体験しなくてすむというのを読んで、私は自分の死それ自体については考えることを止めました。
著者は本書によって心とはどのようなものかという根源の問題にせまっていると思います。